「『性』の不思議がわかる本―♂と♀の進化生態学」

 私たちは、なぜ配偶者なしに子供がつくれないのだろうか。大部分の生物に「性」があり、有性生殖をしていることは、生物学者の間でもあまり認識されてこなかった進化生物学上の難問である。
 本書では、いろいろな動物・植物の例を取り上げ、有性生殖の意義、性の決まり方、雌雄の機能を同時に働かせていたり性転換したりする生物のしくみ、体の大きさなどの雌雄の違いや両性の数のバランス、さらには、動物に見られる多様な配偶システムなど、「性」にかかわるさまざまな現象を進化生態学の視点からわかりやすく紹介する。
「性」の不思議がわかる本―♂と♀の進化生態学「性」の不思議がわかる本―♂と♀の進化生態学
(1991/02)
P.J. グリーンウッドJ. アダムズ

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 さまざまな例が列挙されている感じ

 理論的には、ハセマリやドーキンスの著作で読んだことを大きく越えるようなものはなかった。ただ、ものすごく例が多いので、分かりやすいが、少し冗長。
 進化生態学ってこういうのなのね。

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theme : 生物学、生態学
genre : 学問・文化・芸術

「病気はなぜ、あるのか」

医者と痛風患者の会話


普通バージョン
「それで、私の足指がこんなに腫れているのは痛風だということですね? なんで痛風になるんですか?」
「痛風は、関節液の中に尿酸の結晶ができることが原因です。ざらざらした結晶があったら関節が痛くなるのは、すぐおわかりでしょう?」
「どうして私だけなって、先生はならないんですか?」
「尿酸レベルの高い人というのがいましてね。たぶん、遺伝子と食事の組み合わせでしょう。」
「じゃあ、どうしてからだはもっとうまくできていないのでしょうねえ? もっと尿酸レベルを下げるようなシステムがあってもよさそうだと思いませんか?」
「そうですね、でも、からだに完璧を求めても無理というものでしょう?」

ダーウィン医学
「それはいい質問ですね。ヒトの尿酸値レベルは、他の霊長類よりもずっと高く、その種の尿酸値のレベルと寿命はよく相関していることがわかっています。寿命が長いほど、尿酸レベルが高いのです。尿酸は、どうやら、老化の原因である酸化の影響から細胞を守る働きをしているようなのです。ですから、私たちの祖先は、自然淘汰によって、高いレベルの尿酸値をもつようになったのでしょうね。そこで、このレベルが高い方が寿命の長い生物にとっては有利なので、ときどき痛風になる人が出てきても、尿酸値は高く保たれているのでしょう。」
「それじゃ、尿酸値が高いと老化が防げるのですか?」
「基本的にはそのようです。しかし、今のところ、尿酸値の高い個人がとくに長生きするのかどうかはわかっていません。ともかく、足の指がそのままでは嫌でしょうから、尿酸値を正常範囲に下げて痛風を押さえ込もうとしているところです。」
「それでよくわかりました、先生。」


病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解
(2001/04/15)
ランドルフ・M. ネシージョージ・C. ウィリアムズ

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 「なぜ?」に対する答えは2種類ある。
 なぜ、心臓発作になるのか?
至近要因:からだがどのようにして働き、なぜ、病気になる人もいれば、病気にならない人もいるのかを説明する。
究極要因(進化的要因):これは、さらに過去にさかのぼって、なぜ、私たちが、現在のように設計されているのかと問うものである。心臓発作を研究するにあたって、進化生物学者は、なぜ、自然淘汰は、脂肪を欲しがったり、コレステロールを堆積させたりする遺伝子を排除してこなかったのかを知りたいと思う。
 もちろん、この2つは二者択一のものではない。どの形質を理解するにも両方が必要なのです。本書は、ダーウィンの自然淘汰の理論を基礎として、さまざまな病気に対して究極要因を考えてみようというものです。

【すべての医学の教科書は、その進化的視点に1章をあてるべきである。】
1.症状のうちのどれが病気によって直接引きおこされるものであり、どれが実はからだの防御反応であるのか?
2.病気に遺伝的な要素がある場合、それを引きおこす遺伝子はなぜ存在し続けているのか?
3.新奇な環境要因は、その病気に関与しているか?
4.もしも病気が感染性のものならば、病気のどのような側面が宿主にとって有利であり、どの側面が病原体にとって有利であるのか、そのどちらにも当てはまらないものは何か? われわれの防御を打ち破るために病原体はどのような戦略をとっているか、そのような戦略に対抗するために私たちがもっている戦略は何か?
5.私たちが進化の妥協の産物としてもっているどんなからだの特徴または、歴史的な遺産が、その病気にかかりやすくすることにかかわっているか?

 進化がカリキュラムに加えられたならば、学生たちに、病気について新しい視点を提供するばかりでなく、それなくしては何百万もの個別の知識の寄せ集めであるものに対して、一つの統合的枠組を提供することができるだろう。ダーウィン医学は、さまざまな知識の寄せ集めである医学教育に、知的な統合をもたらすのである。


医者と患者の会話が面白く、この本のテーマをよく伝えると思うので

連鎖球菌性咽頭炎


「さて、これは連鎖球菌性咽頭炎ですから、七日間ほどペニシリンを飲む必要があります。」
「それで、早くよくなるんですよね?」
「たぶんそうでしょう。それに、あなた自身のからだが細菌と闘うために作っている免疫物質のせいで、リウマチ熱のような病気を併発する恐れも、これで少なくなるはずですよ。」
「しかし、どうしてからだは、自分の心臓を攻撃する物質を作るよりも、もう少しましにできていないんでしょうね?」
「それはですね、連鎖球菌は人間と一緒に何百万年も進化してきており、彼らが使うトリックは、人間の細胞の暗号をまねることなのです。そこで、こちらが連鎖球菌を攻撃する物質を作ると、その抗生物質は、私たち自身の組織を攻撃する危険が出てきてしまいます。私たちは連鎖球菌と競争しているのですが、連鎖球菌の方が私たちよりもずっと早く進化するので、私たちは勝てないのです。向こうは、一時間かそこらで新しい世代になりますが、私たちは二十年もかかりますからね。ありがたいことに、まだ彼らを抗生物質でやっつけることができますが、それも一時的なものかもしれません。気分がよくなってからもしばらく抗生物質を飲み続けると、あなた自身のためにも世の中のためにもなります。というのは、そうしないと、抗生物質に短期間さらされても生き残っていけるような変異株を助けてやることになり、そういう抗生物質耐性菌が広まると困ったことになりますからね。
「それで、どうしてこんなに大きな瓶の薬を全部飲まねばならないのかがわかりました。」

心臓発作


「それで先生、私のコレステロール値が高いのは遺伝子のせいだとすると、食事をかえてもどうにもならないのでしょうか?」
「そういう遺伝子は、私たちが進化してきたころの通常の環境では、何も悪さをしないのですよ。毎日、食べ物を見つけるために六時間から八時間も歩いていて、食べ物のほとんどが炭水化物と野生の動物の赤肉だったなら、心臓病にはなりません。」
「しかし、どうして私は、先生に食べてはいけないと言われたものばかり食べたいのでしょうね? ポテトチップもだめ、アイスクリームもだめ、チーズもだめ、ステーキもだめ。先生方は、おいしいものは何でもだめと言うんじゃないですか!」
「どうやら私たちは、アフリカのサバンナではめったに手に入らない、少量で重要なある種の物質を欲しがるように作られているらしいのです。私たちの祖先が、塩分、糖分、脂肪を含んだものを見つけたときには、できるだけたくさん食べるのが彼らにとってよかったのでしょう。今では、塩も砂糖も脂肪も、スーパーのカートに品物を放り込むだけでふんだんに取れるようになってしまったので、私たちは、祖先達の二倍の脂肪をとり砂糖や塩は何倍もとっています。おっしゃるとおりです。私たちはからだに悪い食べ物ばかり欲しがるなんて、悪い冗談のようだ。健康な食事は、現代の環境では簡単に手に入りません。頭と意志を働かせて、原始的な欲望に打ち勝たねばならないんです。」
「それでもやっぱり、好きな食べ物をあきらめたくはありませんね。でも、これで理解はできましたが。」


 非常に面白かった。まるまる3つ挙げましたが、医者と患者の会話が分かりやすいのではないでしょうか。誰しも体験あると思います。医者に質問をして、答えを聞いても、「そういうこと聞いてるんじゃないんだよなぁ、まぁいっか。」みたいに思ったこと。一般的に医療やなんかに興味ある人にも楽しめると思いますし、訳にもたつ。また、進化学系の勉強をしている人にも勉強になります。適応論的な考え方が多数の例で示されていますから、しかも著者の1人はG・C・ウィリアムズですから。
 ウィリアムズの文章は読みやすいです。論理がはっきりしているというか、1つの段に多くのことを詰め込まないで何が言いたいのかがよくわかる。おかしな話ですが、英語の文章を読んでいるみたい。

 ダーウィン医学の本はいくつか他にも出ているんですよね。読みたいなと思ってるのは
ヒトはなぜ病気になるのか (ウェッジ選書 27)ヒトはなぜ病気になるのか (ウェッジ選書 27)
(2007/05)
長谷川 眞理子

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人はなぜ病気になるのか―進化医学の視点人はなぜ病気になるのか―進化医学の視点
(2000/12)
井村 裕夫

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本当のところ、なぜ人は病気になるのか?―身体と心の「わかりやすくない」関係本当のところ、なぜ人は病気になるのか?―身体と心の「わかりやすくない」関係
(2008/07/08)
ダリアン・リーダーデイヴィッド・コーフィールド

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迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか
(2007/08/25)
シャロン・モアレムジョナサン・プリンス

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進化医学からわかる肥満・糖尿病・寿命進化医学からわかる肥満・糖尿病・寿命
(2008/02)
井村 裕夫

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遺伝子―生・老・病・死の設計図遺伝子―生・老・病・死の設計図
(1999/07)
スティーヴ ジョーンズ

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「退化」の進化学 (ブル-バックス)「退化」の進化学 (ブル-バックス)
(2006/12/20)
犬塚 則久

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人体 失敗の進化史 (光文社新書)人体 失敗の進化史 (光文社新書)
(2006/06/16)
遠藤 秀紀

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あたりです。

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theme : 医療・病気・治療
genre : 心と身体

「動物の社会―社会生物学・行動生態学入門」

動物の社会―社会生物学・行動生態学入門
 社会生物学の基本的な教科書、初めにダーウィン理論の基本的な説明がありその次に包括適応度・血縁淘汰・ESSなどに触れ、各論に入る。またおきまりの紹介文になるけど、生徒に社会生物学ってどういうの?って聞かれたら基本的なダーウィンの理論を知っているならこの本を薦める。知らないなら自分で説明するか、うーん、どの本を薦めるかなぁ・・・。

 「(真)社会性」とは、なにか。それの何が問題で、ダーウィンはどう考えたのか。そして現在ではどう解決されているのかが、段階的によく分かる説明になっている。高校生物程度のメンデルの法則と、突然変異・自然淘汰の基本が分かっていれば理解できると思います。非常によい本だと思います。改訂版も出ているようなので手元に置いておきたい本です。
新版 動物の社会―社会生物学・行動生態学入門新版 動物の社会―社会生物学・行動生態学入門
(2006/08)
伊藤 嘉昭

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NOTE
繁殖成功度(reproductive success)=適応度(fitness):1匹の親当たり、どれだけの繁殖可能な子が出来るか
血縁淘汰(kin selection):自分の残せる子どもだけでなく血縁者の残せる子というバイパスを通じて働く自然淘汰。

ホィーラーのサブソシアン・ルート
1) ハチの祖先はこんにちの広腰亜目(ハバチ、キバチ)のように宿主植物に卵を産みつけるだけの生活をしていた。
2) その中にエサを他の昆虫やクモにかえたものが生じた。すなわち寄生バチ(細腰亜目・有錐類)である。
3) 寄生バチのなかの土中の昆虫に寄生する種のなかに、産卵のとき宿主を麻酔するものが生じた。これがツチバチの仲間(以下細腰亜目・有剣類)で、宿主が動きまわるものに比較して、卵の死亡率が低くなったと思われる。
4) おそらく原始的なツチバチの仲間のなかに穴を掘ってそこに麻酔した宿主を入れ、卵を産んでから穴の口を閉鎖するものが生じた(一括給食)こういう生活はベッコウバチ、アナバチの仲間に多い。
5) その仲間に、エサを一度に用意するのでなく、幼虫がかえってからもエサを補給するものが現れた。(随時給食)。ここでは母が直接幼虫を世話している。しかし幼虫が蛹になる前に母は世話をやめ、他の巣を作り始める。一部のベッコウバチ、多くのアナバチ・原始的なスズメバチの仲間のドロバチなどにみられる。
6) 随時給食するハチのなかに、母があとから産んだ子の世話をしているあいだに娘バチが羽化し、母娘2世代の成虫が共存するものが生じた(母娘共存)。
7) このグループのなかに娘バチが外に出てエサを集め、巣へ持ち帰って弟妹に給餌し、母はあまり採餌に出ず産卵を続ける種が生じた。こうして母娘間の繁殖分業を基礎とする共存が始まった。最初は母も働き、娘も少しは卵を産んだが、最後には母は働かず、娘は産卵できないミツバチのような社会が出現した。
1−4:孤独性
5−6:亜社会性
7:社会性(真社会性)

ミッチナーのパラソシアル・ルート(セミソシアル・ルート)
1) 同種のメスたちが狭いところに集まって巣を作る段階(集合巣)
2) アパートのように入り口が1つの共同の巣の段階(共同巣)
3) 他人の子にもエサを与える段階(共同育仔)
4) この共同生活の過程で(順位制によってか、フェロモンなどによる生理的抑制によって)一部のメスが産卵しなくなり、カスト制へ行こうすることもありえた。

ダーウィンの性淘汰
フィッシャーのランナウェイ説
ザハヴィのハンディキャップ説

縄張り(territory):動物が占有し、同種の他の個体に対して防衛する地域
行動圏(home range):防衛しないでいつもそのへんで活動する地域
local mate competition=LMC:交尾が局所に限定されている結果、少数のメスの息子同士が限られた数のメスをめぐって競争しなければならない条件

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theme : 生物学、生態学
genre : 学問・文化・芸術

「生命進化の鍵はウイルスが握っていた―ここまで見えてきた進化の謎」

生命進化の鍵はウイルスが握っていた―ここまで見えてきた進化の謎 (KAWADE夢新書)
 この前のシンポジウムで、「ウイルス進化論(笑)」って感じだったのです。このコンビの本は2冊読んでいて散々だったのですが、頭の体操(どこが理論的におかしいか考えながら読もうかと)と思い手に取りましたが止めておけばよかった。なんも得るもんもなかった。
 ほんとなんでこんな本書くのか理解出来ない。嘘も書いてるし、表現もわざとらしい。二度と読まない。

theme : 本の紹介
genre : 学問・文化・芸術

「やわらかな遺伝子」

 原タイトルは"nature via nurture"つまり「生まれは育ちを通して」です。
 どういうことかと言うと、人間を形作るのは生まれか育ちか?つまり遺伝子によって決まっているのか環境によって作られていくのか?という昔からの論争についての答えがタイトルになってます。"nature or nurture"でも"nature vs nurture"でもなく、"nature via nurture"であると。その2つは対立するものでもなく、ゼロサムでもないと。
 遺伝子は個体を操るわけでもないし青写真でもない。またただの遺伝形質の運び屋でもない。一生の間活動を続け、お互いにスイッチをオンオフしながら、経験に答え、作ったものを改造する。つまり遺伝子は、われわれの行為の原因でもあうと同時に結果でもある、すなわち"nature via nurture"であるということです。このことを様々な事例を挙げ、手を変え品を買え説明していきます。そのいろいろな例が面白いので蘊蓄集としても楽しめます。「ゲノム23の物語」と似た雰囲気です。
やわらかな遺伝子やわらかな遺伝子
(2004/04/28)
マット・リドレー中村 桂子

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性格のばらつきの40%強は遺伝的な要因によるもので、共通の環境(たいていは家族)の影響が10%未満、個人が経験するユニークな環境(病気事故から、学校での交際関係に至る何もかも)の影響がおよそ25%になる。残りの25%程度は、測定誤差である。

 25%は誤差であると言い切られると、信じちゃう。潔い。w

 性格と同程度の遺伝性をもつのが体重だ。きょうだいの体重の相関は、ある研究によれば34%、親子ではこれより少し低くて26%である。この類似性のうちどれだけが生活と食べ物の共通性によるもので、どれだけが同じ遺伝子をもつことによるものなのか?実は、同じ家族の中で育てられた一卵性双生児には80%の相関があるのに対し、一緒に育てられた二卵性双生児の類似性は43%にすぎない。これは、食習慣よりも遺伝子のほうが影響が大きいことを示唆している。では、容姿の場合はどうか?養子と養父母の相関はわずか4%で、同じ家族の中の血縁関係にないきょうだい同士となると、相関はたったの1%だ。一方、別々の家庭で育てられた一卵性双生児では、72%もの相関がある。
 すると、体重は食習慣でなく主に遺伝子によって決まるのだから、食事のアドバイスなどうっちゃって思い切りアイスクリームに食らいつけという結論になるのだろうか?もちろんそうではない。この研究結果は、体重が増える原因については何も語っていない。ある家族の中で体重に差が出る原因を、ある程度明らかにしているにすぎないのだ。食べる量は同じなのに、体重が増えやすい人とそうでない人がいる。西洋社会で肥満が増えているのは、遺伝子が変化しているからではなく、食べる量が増え、運動量が減っているからだ。しかし、皆がほぼ同じだけの食べ物にありつけるのなら、最も体重が増えやすいのは、ある種の遺伝子をもつ人々となる。つまり、体重の平均の変化は環境によるが、ばらつきは遺伝子によるのだ。

 なるほど。平均の変化は環境に依るがばらつきは遺伝子に依るんだ。統計見るときには参考にし、よく考えて見よう。

IQの遺伝性についての研究は、対象が双子であれ、養子であれ、両者の組み合わせであれ、次第に同じ結論へと収斂している。IQは、約50%が「相加遺伝的」[ひとつの遺伝的性質ではなく、複数の働きの総和として決まっているということ]で、25%が共通の環境の影響を受け、残りの25%は、固体ごとの独自の環境要因に左右されているというわけだ。このように知能は、家族の影響をかなり受けやすいという点で、性格とは異なる。インテリ家庭で暮らしていると、インテリになりやすいのである。

 これは職業上感じている感覚に非常に近い。遺伝部分に関しては分からないけども。また、遺伝部分はもっと小さいと信じていたけども。

 教育とは結局、頭にいっぱに知識を詰め込むことではなく、生きていくうえで必要な脳の回路を鍛え上げる事だ。鍛え上げることで、脳の回路は自在に働く。

 これもまた普段心がけていることで、大賛成。思考回路を作ってあげるのが授業だと思っている。初歩の大部分は反射的でよい。大分先になってから創造性が出てくるだろうが、私の仕事の範疇ではないと思っている。もちろん、将来思い出してもらってその助けになればいいなという程度の工夫はしている。TVなどで、中等教育でやれ創造性だやれプレゼンだ個性だと言っている連中がいるが、現場を知っているのか子ども達を指導したことがあるのかと問いたい。考えられない。話がそれましたね・・・。

いまや科学界では、性的指向が思春期の経験によってもたらされるとは考えてない。思春期には、もっと前に露光したネガが現像されるにすぎない。大多数の男性が女性に惹かれるのに、男性に魅力を感じる理由を知るには、おそらくずっと幼い時分までさかのぼって調べなければならない。原因は子宮のなかにある可能性さえあるのだ。

 これ分かりやすい。「生まれか育ちか」を考えるに当たって、育ちってなに?と考えさせられる。

 ヴェルテルマルク効果[ウェスターマーク効果]:幼少期から一緒の生活環境で育った相手に対しては、次第に性的興味を持つ事は少なくなるという現象である。刷り込みの一種。の話しのなかで

 それでも、同じ家族のなかで育った男女が近親相姦を嫌がるのは、言語と同じように、臨界期を迎えるまでに刷り込まれる習癖の明白な一例に見える。ある意味で、この習癖は紛れもなく「育ち」と言える。関係を避ける相手が幼いころ一緒に過ごした仲間である以上、それを生まれる前から知っているわけではないのだ。それでいて、おそらくは特定の年齢で遺伝子のプログラムの準備ができ、その結果必然的に習癖が発現するという意味では、「生まれ」でもある。したがって私はこう言いたい。「育ち」を身につけるために、「生まれ」が必要なのである。

 遺伝子だけでは働かない現象がある。環境=育ちの影響で発現するものがありますよということで、分かりやすい例だと思う。

「準備された学習」:刷り込みとはほぼ正反対の概念で、人間にも動物にも、あらかじめ何かが身に付いているので、学習しやすいこととしにくいことがある。という考え

ミネカは、実験室で育てられたサルはヘビを怖がらないが、野生の環境で育ったサルは皆ひどく怖がるという、1964年から知られている事実を手がかりとした。しかし、すべての野生のサルに、パヴロフの条件反射をもたらすような、ヘビに襲われた経験があるわけではない。ヘビに襲われるとたいていは死んでしまうのだから。ヘビに咬まれると毒にやられるということは、条件づけによって学習する機会があまりないのである。そこでミネカは、「サルは、仲間がヘビに対して示す反応を目にすることによって、ヘビへの恐れを身につけるに違いない」との仮説を立てた。実験室で育ったサルは、この経験がないために、恐れを身につけていないのだ、と。
 まず彼女は、野生の母ザルが捕獲されてから産んだ子ザルを6匹見つけ、それぞれ別々にヘビを見せた。どの子ザルも別段恐がりはしなかった。食べ物を取るのにヘビの方へ手を伸ばさないと行けないときにも、腹を空かせた子ザルたちは躊躇なく手を伸ばした。それからミネカは、母ザルが一緒にいる場で子ザルにヘビを見せた。すると子ザルは、すぐに母親の恐怖の反応―檻のてっぺんまで登り、口をぱくぱくさせながら、耳をそばだてて顔を歪める―を覚え、それ以来、プラスチックのヘビの模型さえも怖がるようになった(これ以来、ミネカハ扱いやすいおもちゃのヘビを使って実験している)。
 続いてミネカは、この恐怖が親だけでなく見知らぬサルからも容易に学習され、簡単に伝播することを示した。サルは、ほかのサルを見てヘビを怖がることを身につけるが、そのサルも、別のサルから同じようにして恐怖を身につけているのだ。次のテーマとしてミネカは、サル同士で、ヘビだけでなく例えば花への恐怖も同じように教えられるかを確かめたいと思った。問題は、最初のサルにどうやって花への恐怖の反応をさせる可だった。ミネカの同僚チャック・スノードンは、ビデオテープで当時開発されたばかりの技術を利用すればいいと提案した。サルがビデオテープからも学習できるのなら、ビデオに手を加えて、「教える側の」サルが、本当はヘビを怖がっているのに花を怖がっているように見せることもできるはずだった。
 この案はうまくいった。サルは、ほかのサルのビデオを見て、本物に対するのと同じように反応してくれたのである。さっそくミネカは、画像の下半分に別の映像をつないで、サルが平然とヘビの模型の方へ手を伸ばして食べ物を取る映像と、サルが花を怖がっている映像を作り、これを実験室で育った未経験のサルに見せた。加工を施していない「本物の」テープ(ヘビを怖がり、花には平然としている)に対しては、サルは即座にヘビは怖いと結論づけたが、加工した「偽物の」テープ(花を怖がり、ヘビには平然としている)に対しては、そのサルはおかしいと結論づけたようだった。花を怖がるようにはならなかったのである。
 これは、私の見たところ、ハーローが針金の母親で見つけた事実と並ぶ、心理学における偉大な実験結果のひとつだ。この実験はさまざまなやり方で繰り返されているが、いつでもはっきりと同じ結論が出ている。サルは、ヘビへの恐怖はいとも簡単に学習するが、ほかの対象への恐怖はなかなか学習しないのである。これは、学習にもある程度本能の要素があることを示している。ちょうど、刷り込みが、本能にもある程度の要素があることを示しているのと同じだ。人間が白紙状態で生まれるという説の信奉者たちは、躍起になってミネカの実験にけちをつけようとしているが、今のところ誤りは見つかっていない。
 サルと人間とは違うが、人間もよくヘビを怖がるのは間違いない。ヘビへの恐怖は、最も一般的な恐怖反応のひとつだ。偶然かもしれないが、たとえば親がヘビを怖がるさまを目にするといった代理体験によって、自分も恐怖を身につけたという人は多い。人間はまた、クモ、暗闇、高所、深い水の中、閉所、雷もよく怖がる。どれも石器時代の人々を脅かしたものだが、現代生活におけるはるかに大きな脅威―車、スキー、銃、電気のコンセント―は、そうした恐怖反応を引き起こさない。ここに進化のしわざを見ないわけにはいかない。 人間の脳は、石器時代に重要な意味があった恐怖を学習するように、あらかじめ配線されている。そして、進化の過程でそのような情報が過去から現在の脳のデザインに伝わる唯一の手だてが、遺伝子なのである。遺伝子とは、過去の世界に関わる事実を収集し、自然選択を通じてそれを未来の好適なデザインに生かす、情報システムの構成要素なのだ。

中略

 それでも、恐怖反応は学習しなければならない。また人間は、車や、歯医者のドリルや、アザラシの毛皮のコートに対する恐怖を学習することもできる。パヴロフの条件反射は、どんな種類の恐怖も作り出せるのだ。しかし、車よりヘビのほうが、恐怖はすばやく身につき、長続きするのは確かで、こうして社会的学習がなされる。(人間の)被験者に、ヘビ、クモ、電気のコンセント、幾何学的な形状などへの恐怖を条件付けする実験では、ヘビとクモへの恐怖が、ほかのものへの恐怖よりもはるかに長続きした。ヘビはまた銃に対する恐怖を(バーンという大きな音によって)条件付けた結果もやはり、ヘビへの恐怖が銃への恐怖よりも長続きした。―ヘビはバーンという音を立てないのに、である。

中略

 この話の何より素晴らしい点は、本書でここまで検討してきたすべてのテーマを結びつけているところだ。一見したところ、ヘビへの恐怖はまさしく本能のように見える。それは独立したモジュールで、自動的で、適応性も示す。しかも遺伝性が高い―双子の研究によって、正確と同じように恐怖反応も、共通の家庭環境ではなく、共通の遺伝子によるところが大きい事実が明らかになっている。それでいて、ミネカの実験は、恐怖反応が完全に学習されたものであることも示している。かつて、これほどまで明白に「生まれは育ちを通して」を実証する事例があっただろうか?学習は、それ自体が本能なのである。

 この実験感心した。著者本人も言っているように時間のない人はここだけ読めばいいくらい明確な例。遺伝子と経験の相互作用ってそういうことかと納得してもらえるはず。
 あと、単に事実としても面白い。ヘビへの恐怖は学習されやすいってすごくないですか?

しかし、社会学以外の学問は、「下位」の説明をうまく取り込みながら、何も失ってはいない。心理学は生物学を利用し、生物学は化学を利用し、化学は物理学を利用している。

 ちょっと文脈がとれなかった。ある意味で社会学を批判しているんだよね。経済学や法学やなんかを「取り込んで」ないのかな。もしくは何かを「失った」のかなぁ。

八歳未満の子どもたちに「このなかでどの子が一番強い?」と尋ねると、全員が飛び上がって「僕だよ!」と大声を上げる。ところがこの年齢を超えた子は、「あいつだ」と言いはじめる。

 面白いね、確かにそんな感じ・記憶あるね。


生まれと育ちの論争の歴史
本書で私がたたえた実験
ローレンツのガンのひな、ハーローのサル、ミネカのおもちゃのヘビ、インゼルのハタネズミ、ジプルスキーのハエ、ランキンの線虫、ホルトのオタマジャクシ、ブランチャードの兄弟、モフィットの子どもたち
は、すべて経験に反応して働く遺伝子の存在を実証している。

ローレンツのひなは、環境によって与えられたものを親として刷り込むように、遺伝的にプログラムされている。
ハーローのサルは、ある種の母親を選り好む遺伝的傾向を示すが、母親の愛がなければうまく育たない。
ミネカのヘビは、本能的な恐怖を誘発するが、それは恐怖反応を示す仲間がそばにいる場合にかぎられる。
インゼルのハタネズミは、惚れるようにプログラムされているが、それもある種の経験に反応してのことである。
ジプルスキーのハエの目には、手探りで脳に向かう遺伝子が備わっているが、その遺伝子は途中で出くわす環境に反応している。
ランキンの線虫は、社会的環境に置くことによって遺伝子の発現を変化させる。
ホルトのオタマジャクシがもつニューロンの先端には、周囲の状況に応じて遺伝子を発現させる成長円錐がある。
ブランチャードが調べた、多くの男の子を産んだ母親の子宮は、母親の遺伝子を通じて、次に産む男の子がゲイになる可能性を高める。
モフィットの調べた虐待児は、反社会的な行動を示すように育つが、ただしあるタイプの遺伝子をもっている場合のみである。
これらの実験は、遺伝子がいわば感受性のかたまりで、生物に融通性を与える手段であり、まさしく経験のしもべであることを、間違いなく示している。「生まれか育ちか」の時代は終わった。「生まれは育ちを通して」の時代よ、万歳!


 結論は分かってた本ですが、なかなか面白かった。どなたかの書評で書いてあったことをマネさせて頂きます。m(_ _)m
 チャールズ・ダーウィン、「優生学」のフランシス・ゴールトン、ウィリアム・ジェームズ、「突然変異」の発見・「メンデルの法則」の再発見のヒューゴー・ド・フリース、グレゴール・メンデル、「条件反射」のイヴァン・パヴロフ、ジョン・ブローダズ・ワトソン、エーミール・クレペリン、「精神分析」のジグムンド・フロイト、エミール・デュルケーム、フランツ・ボアズ、ジャン・ピアジェ、「刷り込みのコンラート・ローレンツのうち半分くらい知っている方か、
 「生まれか育ちか」に興味がある方か、
 「進化論」に興味のある方、私の場合はこれですが、は楽しめるのではないでしょうか。

theme : 自然科学
genre : 学問・文化・芸術

国立科学博物館

ダーウィン展
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