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「病気はなぜ、あるのか」

医者と痛風患者の会話


普通バージョン
「それで、私の足指がこんなに腫れているのは痛風だということですね? なんで痛風になるんですか?」
「痛風は、関節液の中に尿酸の結晶ができることが原因です。ざらざらした結晶があったら関節が痛くなるのは、すぐおわかりでしょう?」
「どうして私だけなって、先生はならないんですか?」
「尿酸レベルの高い人というのがいましてね。たぶん、遺伝子と食事の組み合わせでしょう。」
「じゃあ、どうしてからだはもっとうまくできていないのでしょうねえ? もっと尿酸レベルを下げるようなシステムがあってもよさそうだと思いませんか?」
「そうですね、でも、からだに完璧を求めても無理というものでしょう?」

ダーウィン医学
「それはいい質問ですね。ヒトの尿酸値レベルは、他の霊長類よりもずっと高く、その種の尿酸値のレベルと寿命はよく相関していることがわかっています。寿命が長いほど、尿酸レベルが高いのです。尿酸は、どうやら、老化の原因である酸化の影響から細胞を守る働きをしているようなのです。ですから、私たちの祖先は、自然淘汰によって、高いレベルの尿酸値をもつようになったのでしょうね。そこで、このレベルが高い方が寿命の長い生物にとっては有利なので、ときどき痛風になる人が出てきても、尿酸値は高く保たれているのでしょう。」
「それじゃ、尿酸値が高いと老化が防げるのですか?」
「基本的にはそのようです。しかし、今のところ、尿酸値の高い個人がとくに長生きするのかどうかはわかっていません。ともかく、足の指がそのままでは嫌でしょうから、尿酸値を正常範囲に下げて痛風を押さえ込もうとしているところです。」
「それでよくわかりました、先生。」


病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解
(2001/04/15)
ランドルフ・M. ネシージョージ・C. ウィリアムズ

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 「なぜ?」に対する答えは2種類ある。
 なぜ、心臓発作になるのか?
至近要因:からだがどのようにして働き、なぜ、病気になる人もいれば、病気にならない人もいるのかを説明する。
究極要因(進化的要因):これは、さらに過去にさかのぼって、なぜ、私たちが、現在のように設計されているのかと問うものである。心臓発作を研究するにあたって、進化生物学者は、なぜ、自然淘汰は、脂肪を欲しがったり、コレステロールを堆積させたりする遺伝子を排除してこなかったのかを知りたいと思う。
 もちろん、この2つは二者択一のものではない。どの形質を理解するにも両方が必要なのです。本書は、ダーウィンの自然淘汰の理論を基礎として、さまざまな病気に対して究極要因を考えてみようというものです。

【すべての医学の教科書は、その進化的視点に1章をあてるべきである。】
1.症状のうちのどれが病気によって直接引きおこされるものであり、どれが実はからだの防御反応であるのか?
2.病気に遺伝的な要素がある場合、それを引きおこす遺伝子はなぜ存在し続けているのか?
3.新奇な環境要因は、その病気に関与しているか?
4.もしも病気が感染性のものならば、病気のどのような側面が宿主にとって有利であり、どの側面が病原体にとって有利であるのか、そのどちらにも当てはまらないものは何か? われわれの防御を打ち破るために病原体はどのような戦略をとっているか、そのような戦略に対抗するために私たちがもっている戦略は何か?
5.私たちが進化の妥協の産物としてもっているどんなからだの特徴または、歴史的な遺産が、その病気にかかりやすくすることにかかわっているか?

 進化がカリキュラムに加えられたならば、学生たちに、病気について新しい視点を提供するばかりでなく、それなくしては何百万もの個別の知識の寄せ集めであるものに対して、一つの統合的枠組を提供することができるだろう。ダーウィン医学は、さまざまな知識の寄せ集めである医学教育に、知的な統合をもたらすのである。


医者と患者の会話が面白く、この本のテーマをよく伝えると思うので

連鎖球菌性咽頭炎


「さて、これは連鎖球菌性咽頭炎ですから、七日間ほどペニシリンを飲む必要があります。」
「それで、早くよくなるんですよね?」
「たぶんそうでしょう。それに、あなた自身のからだが細菌と闘うために作っている免疫物質のせいで、リウマチ熱のような病気を併発する恐れも、これで少なくなるはずですよ。」
「しかし、どうしてからだは、自分の心臓を攻撃する物質を作るよりも、もう少しましにできていないんでしょうね?」
「それはですね、連鎖球菌は人間と一緒に何百万年も進化してきており、彼らが使うトリックは、人間の細胞の暗号をまねることなのです。そこで、こちらが連鎖球菌を攻撃する物質を作ると、その抗生物質は、私たち自身の組織を攻撃する危険が出てきてしまいます。私たちは連鎖球菌と競争しているのですが、連鎖球菌の方が私たちよりもずっと早く進化するので、私たちは勝てないのです。向こうは、一時間かそこらで新しい世代になりますが、私たちは二十年もかかりますからね。ありがたいことに、まだ彼らを抗生物質でやっつけることができますが、それも一時的なものかもしれません。気分がよくなってからもしばらく抗生物質を飲み続けると、あなた自身のためにも世の中のためにもなります。というのは、そうしないと、抗生物質に短期間さらされても生き残っていけるような変異株を助けてやることになり、そういう抗生物質耐性菌が広まると困ったことになりますからね。
「それで、どうしてこんなに大きな瓶の薬を全部飲まねばならないのかがわかりました。」

心臓発作


「それで先生、私のコレステロール値が高いのは遺伝子のせいだとすると、食事をかえてもどうにもならないのでしょうか?」
「そういう遺伝子は、私たちが進化してきたころの通常の環境では、何も悪さをしないのですよ。毎日、食べ物を見つけるために六時間から八時間も歩いていて、食べ物のほとんどが炭水化物と野生の動物の赤肉だったなら、心臓病にはなりません。」
「しかし、どうして私は、先生に食べてはいけないと言われたものばかり食べたいのでしょうね? ポテトチップもだめ、アイスクリームもだめ、チーズもだめ、ステーキもだめ。先生方は、おいしいものは何でもだめと言うんじゃないですか!」
「どうやら私たちは、アフリカのサバンナではめったに手に入らない、少量で重要なある種の物質を欲しがるように作られているらしいのです。私たちの祖先が、塩分、糖分、脂肪を含んだものを見つけたときには、できるだけたくさん食べるのが彼らにとってよかったのでしょう。今では、塩も砂糖も脂肪も、スーパーのカートに品物を放り込むだけでふんだんに取れるようになってしまったので、私たちは、祖先達の二倍の脂肪をとり砂糖や塩は何倍もとっています。おっしゃるとおりです。私たちはからだに悪い食べ物ばかり欲しがるなんて、悪い冗談のようだ。健康な食事は、現代の環境では簡単に手に入りません。頭と意志を働かせて、原始的な欲望に打ち勝たねばならないんです。」
「それでもやっぱり、好きな食べ物をあきらめたくはありませんね。でも、これで理解はできましたが。」


 非常に面白かった。まるまる3つ挙げましたが、医者と患者の会話が分かりやすいのではないでしょうか。誰しも体験あると思います。医者に質問をして、答えを聞いても、「そういうこと聞いてるんじゃないんだよなぁ、まぁいっか。」みたいに思ったこと。一般的に医療やなんかに興味ある人にも楽しめると思いますし、役にもたつ。また、進化学系の勉強をしている人にも勉強になります。適応論的な考え方が多数の例で示されていますから、しかも著者の1人はG・C・ウィリアムズですから。
 ウィリアムズの文章は読みやすいです。論理がはっきりしているというか、1つの段に多くのことを詰め込まないで何が言いたいのかがよくわかる。おかしな話ですが、英語の文章を読んでいるみたい。

 ダーウィン医学の本はいくつか他にも出ているんですよね。読みたいなと思ってるのは
ヒトはなぜ病気になるのか (ウェッジ選書 27)ヒトはなぜ病気になるのか (ウェッジ選書 27)
(2007/05)
長谷川 眞理子

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人はなぜ病気になるのか―進化医学の視点人はなぜ病気になるのか―進化医学の視点
(2000/12)
井村 裕夫

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本当のところ、なぜ人は病気になるのか?―身体と心の「わかりやすくない」関係本当のところ、なぜ人は病気になるのか?―身体と心の「わかりやすくない」関係
(2008/07/08)
ダリアン・リーダーデイヴィッド・コーフィールド

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迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか迷惑な進化―病気の遺伝子はどこから来たのか
(2007/08/25)
シャロン・モアレムジョナサン・プリンス

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進化医学からわかる肥満・糖尿病・寿命進化医学からわかる肥満・糖尿病・寿命
(2008/02)
井村 裕夫

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遺伝子―生・老・病・死の設計図遺伝子―生・老・病・死の設計図
(1999/07)
スティーヴ ジョーンズ

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「退化」の進化学 (ブル-バックス)「退化」の進化学 (ブル-バックス)
(2006/12/20)
犬塚 則久

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人体 失敗の進化史 (光文社新書)人体 失敗の進化史 (光文社新書)
(2006/06/16)
遠藤 秀紀

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あたりです。
目次
まえがき
謝辞

第1章 病気の神秘
 2種類の原因
 病気の原因
 本書で述べていないこと
第2章 自然淘汰による進化
 自然淘汰は集団ではなく遺伝子に有利に働く
 血縁淘汰
 自然淘汰はどのように働くか
 進化的仮説の検証
 適応論的アプローチ
第3章 感染症の兆候と症状
 感染に対する防御としての発熱
 鉄分の抑制
 戦略と対抗戦略
 衛生
 皮膚
 疼痛と倦怠感
 強制排出にもとづく防御
 侵入者を攻撃するメカニズム
 損傷と修復
 病原体による宿主の防御のくぐり抜け
 宿主の防御への攻撃
 病原体がもっているその他の適応
 病気への機能的なアプローチ
第4章 終わりなき軍拡競争
 過去の進化 対 現在の進化
 抗生物質への細菌の抵抗性
 毒性の短期的な進化
 免疫反応の利益と損失
 まずます複雑になる偽装
 新しい環境要因
第5章 ケガ
 ケガの回避
 一般化された学習と理解
 ケガの修復
 やけどと凍傷
 放射線
 からだの部分の再生
第6章 毒素―新、旧、いたるところ
 自然の毒素と自然でない毒素
 自然の毒素に対する防御
 新種の毒素
 突然変異と催奇物質
第7章 遺伝子と病気―欠陥、変わり者、妥協
 遺伝子がすること
 病気の原因となるまれな遺伝子
 病気の原因となる一般的な遺伝子
 無法者遺伝子
 遺伝的気まぐれ―近視その他たくさん
 遺伝子を怖がるな
第8章 若さの泉としての老化
 加齢の神秘
 老化とは何か
 一頭立ての馬車
 なぜ年を取るのか
 老化のメカニズム
 老化の速度における性差
 医学的な意味合い
第9章 進化史の遺産
 他の機能的な設計の不備
 最後の仕上げ
 石器時代における死
 石器時代の生活
第10章 文明化がもたらした病気
 現代の食生活の不適切さ
 現代の栄養の取り過ぎ
 中毒
 現代の環境に由来する発達上の問題
 現代の環境に由来するその他の病気
 結論といくつか奨励したいこと
第11章 アレルギー
 IgEシステムの不思議
 アトピー
 もっとやっかいな疑問
第12章 癌
 問題
 解決
 癌の予防と治療
 女性の生殖器系の癌
第13章 性と繁殖
 なぜ性があるのか?
 男性性と女性性の本質
 雄と雌のあいだの葛藤と協力
 配偶者の好み
 欺瞞的な配偶戦略
 繁殖の解剖学と生理学
 嫉妬
 性的障害
 妊娠
 出産
 幼児期
 泣きと疝痛
 乳幼児突然死症候群(SIDS)
 離乳とその後
第14章 精神障害は病気か?
 感情
 不安
 新しい危険
 悲しみとうつ病
 愛着の欠如
 子どもの虐待
 精神分裂病
 睡眠障害
 夢を見ること
 精神医学の未来
第15章 医学の進化
 病気の原因に関する総論
 研究
 なぜこんなに長くかかったのか?
 医学教育
 診療においてもつ意味
 政策上の意味合い
 個人的及び哲学的な意味合い

訳者あとがき

索引
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はじめてコメントいたします。
世の中にはたくさんの人が病気や怪我で困っていますよね。
そんな方々に物理的にも精神的にも、手助けできることはないかと日々模索しています。
私は肝臓移植や腎臓移植などの臓器移植について勉強中です。
少しでも多くの人たちを助けらればと考え、微力ながらも行動しています。
こちらのサイトは参考になり大変助かりました。
ありがとうございました。
プロフィール

AmateurD

Author:AmateurD
 進化生物学を学ぶアマチュアです。本業は数学教師です。ほとんど自己満足の日記と化してますが、コメントどんどん下さい。質問・議論・アドバイスも歓迎です。

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