「銃・病原菌・鉄」
![]() | 銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎 (2000/09) ジャレド ダイアモンド 商品詳細を見る |
この壮大な謎を、1万3000年前からの人類史をたどりつつ、分子生物学や進化生物学、生物地理学、考古学、文化人類学などの最新の研究成果をもとに解き明かしていく。
![]() | 銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎 (2000/09) ジャレド ダイアモンド 商品詳細を見る |
その勝敗を決めた要因とは何か。それはたんに銃器や金属製の武器の有無だけではなかった。政治形態、戦闘要員を支える社会基盤、戦闘用の馬の存在、情報の伝達と保持のための文字分化の存在、さらには、その社会が持つ病原菌も大きく影響していたのである。
人類史を動かしたさまざまな要因を詳細に分析し、東アジア・太平洋域・オセアニア・新旧大陸の衝突・アフリカ大陸それぞれについて具体的に検証していく。
久々に非常に面白い本を読んだ。
ヤリという名のニューギニア人がダイアモンド博士に何気なくこう問いかけた。
「欧米人達は様々な物資をニューギニアに持ってきたが、ニューギニア人達はそうした物資を何も作り出さなかった。その差はどこから生まれたのか。」
世界のある地域には工業化が進み、多用な物質文明を発展させた人口の稠密な社会があり、別の地域には多様な物資をほとんど持たずに伝統的な生活を続けている社会がある。こん、当たり前のように思われがちな事実についての素朴な疑問に対し、著者は明快な答えを返す事が出来なかった。
それから25年後、人類社会の歴史が大陸ごとに異なる経路をたどった要因と、それらの要因の因果の連鎖を地球規模で科学的に究明し、新しい人類史観を示すものとして本書を著した。博士の答えを要約するとこうなる。
今から1万3000年前、最終氷河期が終わった時点では、人類は世界各地でみな似たり寄ったりの狩猟採集生活をしていた。その後、各大陸で歴史はそれぞれに異なった経路をたどっていく。大陸ごとの差異が生じ、やがてその格差が大きく広がっていった。そして16世紀には、南アメリカ大陸のインカ帝国をユーラシア大陸からやってきたスペイン人が征服するまでになった。なぜスペイン人がインカを征服したのであって、インカ人がヨーロッパを征服したのではなかったのか。その直接の要因は、スペイン人が持ってきた「銃・病原菌・鉄」であった。
では、なぜ、スペイン人はそれを持っていて、インカ人は持てなかったのか。ユーラシア大陸では早くから狩猟採集から農耕へと移行した。このことが、優れた武器や技術、発達した政治機構を生んだ。
では、なぜユーラシア大陸ではそのような発達を遂げることができたのか。ユーラシア大陸は東西に長く、アメリカ大陸は南北に長い。東西に延びている場合には、野生種の栽培化や家畜化の際にスムーズに技術が伝わるが、南北に延びている場合には気候が異なってくるので、その伝達が遅くなってしまう。そのことにより、ユーラシア大陸では狩猟採集から農耕への移行がスムーズかつ速やかに行われ、アメリカではそうはいかなかった。 また、ユーラシア大陸には人間が家畜化するのに適した大型哺乳類が多く生息していたが、アメリカでは既に絶滅してしまっていたから、家畜を飼うということが出来なかったため、家畜と長く接することにより、ヨーロッパ人は病原菌に対する免疫を持っていた。
おおまかに書くと、こんな感じです。著者は進化生物学者で、論の進め方に慣れていたので分かりやすかった。納得いくまで、なぜ、それはなぜ、とトコトン突き詰めてくれるので面白かった。生物学で言うところの「究極要因」は歴史などでも当てはめられるんだというのを初めて体験した。学生時代に学んだ歴史は全く毛並みが違っていて退屈なものだったけど、このような歴史へのアプローチならもっと勉強してみたいとも思った。



