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「集団の遺伝」

集団の遺伝 (UPバイオロジー 19)集団の遺伝 (UPバイオロジー 19)
(1977/04)
大羽 滋

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 面白い!!

 これ、完全に教科書スタイルだし読むだけでは面白くないと思って、実際に紙と鉛筆で計算しながら、ノートにまとめながら読みました。まだ完全に理解出来たわけじゃないので、3回くらい読んでます。集団遺伝学という学問自体、非常に面白いかも知れません。中立説の木村資生も集団遺伝学者ですよね。
 ただかなり難しかった。基本的な進化に関する知識が身に付いていて、数学的な力もある程度ないと辛いかな。生徒(高校生)にはちょっとハードルが高いかもしれません。深く学ぶ分野として集団遺伝学は1つの候補かな。
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theme : 生物学、生態学
genre : 学問・文化・芸術

「進化をどう理解するか」

進化をどう理解するか

p5 このような地球の状態を想定して、本格的に生命発生の実験に取り組んだ最初の人が、ホールデンで、1928年のことである。

 ホールデンはそんな実験までしてるんだ。すごい人です。

p11 地球の自転
 これに注目した最初の人は、パスツールであった。地球は一方向にしか回転していない。その影響で生命には一方の型だけが残っているのではないか、と彼は奇抜な思いつきをした。パスツールは、このことを証明する実験さえ計画し、その一部を実行に移した。<中略>しかし、当時著名な有機化学者であったビオーの忠告もあって、この計画はようやく取りやめになったと伝えられている。

 これは面白い。初めて聞いた。確かに有機化学の鏡像だっけ。光学異性体か。それが生物ではどちらか一方しか現れないというのは謎ですよね。

p88 この地球上には、異なる型の、しかもそれぞれ調和のとれた遺伝子の集団が存在する。その1つ1つが種である。
 自然界では、新しい種が生じる変化は徐々に起きる。多くの場合、わずかの突然変異が集積していって、ついに別の種ができあがる。もとの種を形成している遺伝子集団のうち、2,3の遺伝子が変化したところで、その遺伝子集団全体の調和は乱れない。変化を起こした個体と、変化していない固体の間に、生殖能力があれば、少しの遺伝子の変化であれば、打ち消される。変化した遺伝子は、この種の個体群の中にばらまかれていくだけである。突然変異が起こっても、それが集団内で大規模に起こらない限りは、その種個体群の遺伝子構成を多様にするだけであって、新種の形成には役立たない。いま見てきたように、遺伝子の突然変異があっても、種分化にいたるのは、やはり長い長い道程がある。小進化という段階でも、集団の遺伝子系の変化までおよばなければならない。
 遺伝子系が新しくできて、小進化が起こったとしても、これらすべてが環境に適応した結果とは限らない。環境に不適合な形質または、少なくとも有利でない形質の遺伝子系が集団で確立されるときもある。これがライト効果または遺伝的浮動と呼ばれている現象で、小進化においては、わりとしばしば見られる。
 進化をすべて環境との適応ないし調和の結果と受け止めてはならない。

 はい、大丈夫です。解っています。中立説やほぼ中立説ですね。浮動も「集団の遺伝」で学びました。

p116 温帯の落葉性の起源をアクセルロードは次のように説明している。まず、高温多湿な熱帯付近にやや不規則な乾燥気候が生ずる。この気候帯で発生し、適応性を獲得した植物がより内陸の感想気候帯へ進出し、さらに高緯度の光周期と冷涼な気候へ適応していく。新生代にはいると、より高温の年間較差の大きい気候条件に適応するようになると。

 あのアクセルロッド?この本に何度も出てきた「植物の進化を探る(前川文夫)」(1969)も神田で手に入れてあるんだよな。あまりにも古いからちゃんと読むかどうか迷ってたんだけどこの本以外でも引用されていた記憶があるから大事な本なのかな。

 なんか著者の”進化観”を述べたような本で、章の構成も進化をオーソドックスに学びたい読者を思いやってという感じではない。お勧めはしないかな。彼の専門らしい細胞の進化・植物の進化は初めて聞いた話も多かったので有益でした。

 最近の悩みはこんなん続けてていいのかなと。(笑) 入門書や啓蒙書っぽいのは卒業した方がいいのか、それでもまだまだ学ぶべき所があるのか悩みます。誰か師がいればいいのだけど。何か1つ専門的に深く学ぶ分野を作るべきだろうとは思うのだけれど、どの分野にするかなぁ。
 そのことについてしばらく考えてみよう。実際には100冊超えてるだろうけど、まずはblogベースで100冊目指します!

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「進化はどこまでわかったか」

進化はどこまでわかったか


 もはや乱読という感じだが、図書館で関連のあるものはかたっぱしから行こうと思ってます。

 よくコンパクトにまとまった本ですが、ちらほら表現に誤解を招きそうなものもあり、生徒には勧めないかなぁ。

p43 不思議なのは、あまり長くないDNAが染色体の中で動き回る現象である。<中略>その後、原核生物にも真核生物にもDNAの上を移動して歩く因子が発見されている。生理的な存在理由ははっきりせず、むしろ遺伝子の情報を僅かに変化させて、進化を加速するものではないかと思われている。

 こういう比喩は初学者に誤解を招く。進化を加速する「ために」何らかの機構が存在するということはない。ある機構が結果として進化を加速するように働き、加速することが他のものより有利であれば、その機構は残るということはありうる。

p54 結局、現在の分子の中に観測される分子進化はほとんど全部、中立または中立に近い変異である。中立ということは生物の形や性質に影響しないことであるから、そのような変化を進化と呼ぶことは誤解を招きやすい。ダーウィン以来の巨視的な進化で扱われてきた生物の形や性質の変化は、分子進化とは直接には関係がない。分子進化として観察されるような置換が集積して、ダーウィンの言う自然淘汰を受けて、巨視的な進化が起こるのではない。巨視的な変化を起こすのは、中立ではなく、少しでも有利な変化である。

 うーむ。大進化と小進化の問題は1冊読まなければと思っています。”ほぼ中立説”の本も読まねば。

p55 軸対称と左右対称 
 生物の形には大きく分けて軸対称と左右対称がある。
 植物は軸対称のことが多い。そして軸はほとんどの場合重力の方向に一致する。<略>
 植物の生活には太陽は重要であり、太陽に面する側と反対側では、生育をはじめいろいろ違う。年輪も明らかに厚さが異なる。それなのに動物の場合のように二軸性の形にならないのは、太陽の影響は思ったより小さいのかも知れない。あるいは植物の形は原理的には二次元なので二軸性にはなれないのかもしれない。
 度物は腔腸動物では軸対称であるが、それより先のものはほとんど左右対称である。棘皮度物のウニやヒトデは軸対称のようであるが、厳密には左右対称であるらしい。<略>
 動物は重力の影響の下で運動しなければならないので、重力の方向と進行方向と二本の軸を持つことになり、結論が左右対称ということになるらしい。
 軸対称には二回、三回、四回の対称軸もあるが、五回の対称軸が比較的に多いのは奇妙である。<略>
 脊椎度物の四肢には五本の指があるが、これは棘皮動物のウニやヒトデで見かけで五回対称軸を持つものが多いことと関係があるだろうか。

 これは面白い議論だ。ダーシー・トムソンの「生物のかたち」とテーマは同じですね。ただ、指の本数は関係なかろう。


p58 長い時間の間には、塩基の置換が二度以上起こる可能性がある。っして置換によって再び同じ塩基になる可能性もあるので、ある程度以上長い時間では分子時計は遅れるように見える。

 なるほど!納得。分子進化の本も読むリストに入ってるんだけど、難しそうだしなぁ。しばらく先になりそう・・・。

p74 ダーウィンの著書の題が『種の起源』であったことが示すように、進化は新しい種のでき方の問題でもある。種の区分には互いに交配しないものという定義が使われるが、その分子的な機構は複雑である。雄と雌が交尾しない、精子が卵子に近づけない、精子が卵子に進入できない、受精卵が育たない、などいろいろの段階で障害があり得る。このどれかが起これば新しい種が生まれるので、どうなったら種の分離が起こるかということは一言では言いにくい。多くの生物種でゲノムの解析が進めば、この点に関して新しい手がかりができるかも知れない。

 種の区分つまり種の定義は様々で、ここに挙げられているものだけではない。ただ、議論としては面白いし納得した。たしかに不妊と言っても様々な機構がある。

p113 社会性昆虫
 個体が利他的な行動をすることは不思議に思われて、いろいろな理由が考えられている。生物は自分と同じ遺伝子を保存しようと行動していると説明されることが多い。

 これも誤読しやすい表現だなぁ・・・。読む人が困るじゃないか。

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"Fruitless Fall" 「ハチはなぜ大量死したのか」

ハチはなぜ大量死したのかハチはなぜ大量死したのか
(2009/01/27)
ローワン・ジェイコブセン

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 日本でも話題になったミツバチの失踪事件?その理由を追うドキュメンタリータッチの本で、学術書という感じではない。そこそこ読みやすいと思う。はっと気づかされる記述も多く、非常に面白かった。高校生くらいの読書感想文や小論文の題材に丁度いいかも。
 ただ、日本語版タイトルがいただけない。原題は"Fruitless fall"「実りなき秋」って感じですかね。最近、高校生の英語の教科書にもよく載っている『沈黙の春』これの原題は"Silent Spring"です。きっとこれにかけてタイトルを付けたろうに、日本語版の編集者はセンスがない。

 久しぶりに結構面白かった本であることは間違いない。食料という身近な問題であるということもあるし、ミツバチ自体身近な生物だし。ほんとにしゃれにならない事態になる可能性あるもんね。


 さて、memoです。

p29 私たちが口にする食物の実に80%が花粉媒介者のお世話になっているのだ。あなたの食べる牛肉も、草で育てられたとすれば、おそらく昆虫が受粉した植物を飼料にしていることだろう。石油と繊維産業を抱えるアメリカ南部有数の農産物である綿花も忘れないでほしい。綿花畑も、最近はじめて、豊作を確実にするためにミツバチの巣箱を借りなければならなくなった。

 これ、すごいわ。全然気がつかなかった。人に話したくなる話だよね。

p56 蜂の社会では、「みんなは一人のためにあり、一人はみんなのためにある」

 これ、ラグビーでよく言われますね。きっと"One for All, All for One"でしょうね。

p84 蜂の異常行動よりさらに奇妙だったのは、ふだん蜂の巣を襲う外敵の行動だった。蜂蜜のつまった蜂の巣は、エネルギーを手っ取り早く手にできる究極のごちそうだ。巣には、無数の蜂が数億個の花から集めてきて、すぐに食べられるように加工した10万キロカロリーもの蜂蜜が詰まっている。ハチノスツヅリガからクマにいたるまで、捕食者はこの誘惑にさからえない。彼らを唯一遠ざけるものは、巣内にうごめく五万匹の毒針を持った兵隊だ。この兵隊がいないとすれば、奪略者たち、とりわけ他の蜂たちは、あっという間に巣に押し寄せて、手当たり次第に巣を荒らすはずだ。

 10万キロカロリーか、そりゃすごいわ。誘惑に逆らえないわ。

p218 もしあなたの祖先が私の祖先と同じようにヨーロッパからやってきたのなら、その人たちは、おそらく黒死病を生き残った人々だったろう。天然痘も生き残ったかもしれない。私たちがいまここに存在しているのだから、祖先は運がよいほうの人だったことは明らかだ。疫病が不幸な出来事以外のなにものでもないことに反論を唱える人はいないだろう。それと同時に、疫病が去ったあとには、復元力の強い遺伝子を持つ人たちがあとに残るという事実も否めない。かつて私たちの免疫系が守りについていた最前線を抗生物質と消毒液が守るようになった今日、私たちはおそらく過去数百年でもっとも流行病に弱い立場にいるに違いない。
 イタリアのミツバチは、何十年にもわたって、復元力とはほとんど関係のない特質を伸ばすように交配されてきた。伸ばしたい特質のトップを飾っていたのは蜂蜜生産能力で、仲間を増やす力も同じぐらい乞われていた。性格の穏やかさも欠かせない要素だった。自立に資する特質、すなわち寄生虫や病気への抵抗力、越冬能力、餌が少なくても耐えられる力などは、あまり重要視されなかった。というのは、このような問題は、石油化学に頼って解決したほうが効率がよかったからだ。

 よく言われることだが確かに弱くなっている気がする。アレルギーとかもそうだけど、すぐに肌が荒れたり、現代っ子は無菌状態で育てられて抵抗力が弱いってこともありますよね。
 ハチもそうか。確かに人為選択によって何らかの能力が弱くなることは論理的にはありうることだ。

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 進化生物学を学ぶアマチュアです。本業は数学教師です。ほとんど自己満足の日記と化してますが、コメントどんどん下さい。質問・議論・アドバイスも歓迎です。

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